《杏子どの、あの夜はすごかったのう。杏子どのの艶っぽさは……ひでぶっ!》
あたしはげしげしとその場の陰に蹴りを入れた。
そう……
懸念だった開発計画が中止されたのに、アプレクターじいちゃんは何でか未だにあたしの影に取り憑いてるんですけど。
「あんたいつまであたしに憑いてるわけ!?」
《ワシはあの御神木と約束したのじゃよ。紅葉の君と産土し……》
「っと!おじいちゃん、明日の牛乳の銘柄は何がいい?」
あたしは慌ててアプレクターじいちゃんの口を塞ぐため、無理やり話題をすり替えた。
危ない危ない。
アプレクターじいちゃんの声は、ナギにもきっちり聴こえてるんだから。
紅葉の御方と産土の宮さまの言い伝え……。
その事を理由にして、ナギの特別な人になりたいとあたしは思わない。
昔は昔で、今は今なんだから。
たとえ魂が同じとしても、今のあたしは渚杏子。
ただのどころか平凡以下の女子高生。
外見だって美しいどころか可愛くもなくて。



