2人は部屋に入ったると、改まったようにその場で正座をした。
「今まで迷惑をかけてごめん。姉ちゃん、母ちゃん。
僕もさ、今まで色々考えてたんだ。
でも、行き着く先は全部同じで。
僕なんか生きても仕方ない、邪魔になるとか必要ないとかばっかり考えて。
下らない世の中だって、もう何度も絶望したよ。
だけどさ……。
正さんが僕の話し相手になってくれてから、少しずつ考えが変わったんだ。
僕はまだ世の中……世界のごく一部しかしらなかったんだなって。
正さんの広い知識と視点を感じてそう思えたんだ。
正さんはアルバイトしながら小説家になるために、いっぱい一生懸命に勉強してるのに。
年上の僕は何にもしないでいじけて閉じこもってるだけ。
なんだか情けなくなってきてさ。
大学はもう諦めて、僕も働こうと思うんだ。
そして、ゆっくりでもいいから小さい頃からの夢だったマンガ家を目指そうと思って。
夢ってのは、見てるだけじゃ叶わない。
自分の手で掴んでくものだって、正さんが教えてくれたから」
史さんは揺るぎない瞳でそう言った。



