「あの……なにか?」
なぜだか溢れそうになる涙と声の震えを抑えながら訊くと。
瑠璃さんはハッと我に返った様子で、慌てて謝った。
「いいえ、なんでも。それより、どうぞそちらをご覧くださいませ」
瑠璃さんがいやに熱心に勧めるものだから、自分の中で起きた感情の波と共に戸惑いながら、あたしが箱を留めていた紐を解いて蓋を開けると。
中から出てきたものは、少し変色した和紙。
汚さないように気をつけながら両手でそっと持ち上げると、それは墨で書かれた文らしき物だったけど。
その文字は読めない筈なのに。
その字を目にした瞬間、あたしは今まで堪えていた涙が零れ落ちるのを止められなくなった。
懐かしさと切なさと……
どうしようもなく温かく熱いものが心に満ちて。
あたしはほんの一瞬だったけど、自分がまるで1000年前に戻ったような気さえした。
どうして?
困惑しているあたしに、瑠璃さんが口を開いた。
「それは産土の宮さまから、紅葉の御方さまへ贈られたお文で御座いますよ」



