「今までお話ししておりませんでしたが、実は工場が出来る前、御神木を祀る小さなお寺が近くにございまして。
我が家祖父江家は代々檀家としてお世話しておりました。
50年前に御神木が伐り倒された際、同時に御堂も御本堂も全て取り壊されまして。
何せお寺を潰すのを命じたのが、神主であるはずの産土本家でしたから、私達ではどうしようもなく。
せめてものお形見をと、檀家や縁のある方々がお寺からいろいろと分けて頂きました。どうぞご覧ください」
瑠璃さんのお言葉に甘えて拝見すれば、どれも小さなお寺にあったとは思えない程に見事なできばえの品々ばかり。
その中で自然と目が向いたのが、漆塗りに金箔が散りばめられた立派な木箱だった。
裏書きには流麗な文字で何か書かれていたけれど、バカなあたしには読めない。
それを手に取ると、なぜだかあたしは体の奥から熱いような想いが湧き出て、それと同時に故郷に戻ったような懐かしさを感じてたまらない。
瑠璃さんはなぜか不思議な目つきであたしを見た。



