産土家から分かれ京に住居を構えた産土親王と紅葉の御方の次男が興した分家。
そこより数多の姫君が帝や東宮の許へ入内し、多数の皇子や皇女が生まれ、中宮や皇后を輩出し、京でも屈指の華やかな名門貴族として栄えたのだ。
そういえば産土親王に恋慕したひとりの姫宮がいたことを、私だけが知っている。
紅葉の君と産土親王が会った後、垣間見た親王の姿が忘れられなかったのは、先帝の女五の宮。
斎宮として伊勢に下られる前に噂の神木を一目見ようとお忍びで来て、産土親王に一目惚れしたのだと。
しかし、帝の代替わりで斎宮の任を解かれて都へ戻れば、最愛の御方は既に紅葉の御方と結ばれて。
嘆いた姫宮は紅葉の御方への対抗心から、時の帝に美しさを見初められ、お勧めになるままに女御として入内。
女一宮を始めとした三人の御子をもうけ、中宮へと叙された。
ただ一人の男皇子であった三の宮は東宮になれなかったものの、血筋の高貴さ故に皇親王(すめらぎしんのう)と呼ばれ、皇家の始祖となった。



