アプレクターじいちゃんは、かけらに残ってた大樹の記憶や想いをあたしに見せてくれた。
1000年樹はなんのいわれもない、ごくふつうの樹だった。
鳥によって遙かかなたから種が運ばれ、かの地に芽吹き根付く。
最初は弱い樹で、何度も枯れる危険に晒されたけれど。
ひと雨ごとに、少しずつ強くなっていって。
最初に花が咲き実を結んだとき。
動物や虫や鳥たちがまるで祝福するように、集まってくれた。
甘い香りを放つ果実は、鳥や動物たちの貴重な食糧となった。
それ位しか出来ないけれど。
どれだけ多くの生命達と触れ合い、また、助け合ってきたか。
体を喰おうとする虫を、鳥は食べてくれた。
その鳥に巣となる枝を提供した。
可愛い雛は枝や幹から、何千羽巣立ったろう。
老いたときに出来たうろ(幹の穴)では、キツネや熊が出産した。
茸はリスが食べに来て、果実は動物や鳥や虫を寄せる。
樹液を求めて争う甲虫や蝶。
様々な四季の移ろいの中で、数え切れない生命たちと関わった。