包んでいたハンカチからこぼれた種を、小久保さんはひと粒残らず拾ってあたしに渡してくれた。
14粒ちょうどちゃんとあって、あたしはホッと安心した。
ただの種なのに、なんでこんなに大切に思うのかな?
今まであたしは特にお花に興味を抱いた事なんてなかったのに。
「ありがとうございます。小久保さんは花にお詳しいんですね。ステキな事です」
お礼を込めてあたしがそう言うと、小久保さんはあたしが差し出した本を受け取りながら
「小説のために調べてて……」
とぼそぼそ小さな声で言いながら、後はあたしの目を避けるように本を抱えて脇をすり抜けると、階段口を出て左手に消えていった。
確かに、小久保さんが手にしてた本は園芸関係のものばかりだったけど。
ひとめ種を見ただけで判別出来るくらい勉強しなきゃ、小説なんて書けないのかな?
でも、アプレクターじいちゃんが気になるコトを言い出した。
《先からあの殿方に会うてから気になっておったんじゃが……
あの者から清らかな気配がするのじゃ》



