意識を引き戻し慌てて相手を見たら、102号室の住人の小久保正さんだった。
「ごめんなさい!」
危うく転びそうになった小久保さんの体は、後ろにいたマモル君が支えていてくれてよかった。
あたしは膝を屈めて散らばった小久保さんの持ち物を集めた。
見たところ本ばかり数冊。
「あ、いいです」
小久保さんはマモル君にペコリとお辞儀して、足元にあったものを拾いはじめた。
本当に寡黙なんだなぁ……。
あたしが本を拾い終えると、小久保さんは手にした物を手のひらに載せてジッと見入ってた。
それはナギからもらった、なんの木の実か種かわからない小さな粒々たち。
白っぽいのもあれば茶色いものもあって、いろんな色が混じってる。
「これはローズヒップから取れた、正真正銘のバラの種ですね。
きちんと選別が済んで、後は蒔くだけの状態です。今からが蒔くのにちょうどいいかもしれません」
驚いたぁ。
大人しくて寡黙だという印象があった小久保さんが、こんな風に饒舌になるなんて。



