「ケンもケンだよね……あんなに軽いオトコとは思わなかった。
チカの気持ちを知ってて、見せつけるように堂々と浮気してんだもん。
ケンってば最低!
あんなオトコを好きになった自分が恥ずかしい……」
チカの罵る声は途切れた。
あたしが振りかぶってチカの頬を張ったから。
まだ朝靄が残る中で響いたその音は、チカの高ぶった気持ちを落ち着かせたのかもしれない。
あたしは思わず手が出たことに驚いたけど。
ケンを侮辱するチカなんて見たくなかったから。
「チカのバカ!ケンがどんな想いであんたを守ろうとしてるか知らないくせに!
あたしの悪口はいくら言ってもいい。
だけど!
命賭けであんたを守ろうとしてるケンの心まで疑って侮辱しないでよ!
ケンは今、暴力団に絡んだ件からあんたを守るために、わざと何も言わないで突き放してんじゃない!」
あたしが涙を流しながらそう叫ぶと、チカの表情が一気に変わった。
「暴力団?なにそれ?いったい何の話!?」
勢いで叫んじゃったけど、もう後には引けない。



