「凪さま、お探し致しました。
もしやどこかでお怪我でもされていたかと思い、胸がつぶれるような心地でいましたが……
ご無事で本当によろしかったですわ」


よく見えなかったけど、命さんは涙を流してた。


なぜかあたしの胸がチクリと針に刺されたように痛む。


「婚約者をほおっておいた失礼はお詫びします。あなたは将来私の妻となる大切な婚約者どのですから、これ以上ご心配をかけないよう努力しましょう」


そう言ったナギは……


命さんの肩を抱いて、自分の胸に抱き寄せた。


ついさっきあたしがいた場所に。


それを見たあたしは、胸が詰まりそうな苦しさを感じて目をそむけた。



でも、気になる事があった。


ナギがさっきあたしにキスした時、口移しでくれたもの。


あたしはハンカチを出して、その上に広げてみた。


見たところ何かの木の実か種に見えるけど、何だろう?


ナギはどういうつもりで?


いくら考えても、あたしに解るはずもなくて。


その晩はほとんど眠れなかった。