足を振り上げてたあたしを見たからか、命さんの顔には明らかに驚きと。
あたしに対する軽侮の色を浮かべてた。
だけど、そんな彼女の表情はほんの一瞬で消えて。
後は静かな水面の如きいつもの微笑みをたたえてた。
「これは渚さま、お久しぶりでございます。
今宵はよい月夜でございますわね。
これが秋でしたらどんなに見事な綾錦に彩られ、降るような虫の音が聴こえた事でしたでしょう。
ただ今聴こえるのは松のかわす風音ばかりで、侘びしゅうございますわ」
……は?
あたしは命さんの言ってる意味が解らなくて、ぽかんとした顔を晒してたろうな、きっと。
命さんは俯いて口元を袖で隠してらっしゃいまして。
わ、笑われちゃったの?もしかして。
「このふたつの松(待つ)の木のように、わたくしに隔てをお持ちになられますのを恨めしく存じますわ」
それでやっとあたしにも意味が解った。
つまり、仲良くしてくださいね、ってコトだよね?
でも、なんであたしにそんなコトを今更言うの?



