今日おろしたお金を持ってケンの家を訪れたけど、もう明かりが消えてたから仕方なく明日渡そうと踵を返した。
色々あった疲れもあって、ぼんやりとしたあたしの頭は。
あたしの住むアパートの出入り口に、信じられない人の姿を認めた瞬間にしゃっきりはっきりすっきりとした。
立ち話もなんですから、とあたしはその人を自分の家に上げたけど。
いったいどうして?
長年使ってぺらぺらに薄い座布団に座り、あたしの淹れたお茶を洗練された作法で頂く姿もため息が出るほど美しい。
皇命さん。
貧乏なボロアパートに一番合わなそうな彼女がどうしてこの家に来たのか、あたしは彼女の真意をはかりかねて何も言えない。
奇妙な緊張感と長い沈黙が続いた後、口を開いたのは命さんだった。
「突然この様な夜更けに訪れた非礼をお許しくださいませ。
どうしても渚さまには申し上げたい事がございまして」
命さんはそう言うと、あたしの顔を真っ直ぐに見つめた。
「わたくしと凪さまは、赤さまの時よりの幼なじみでいとこですの」



