「私の命で我が子が助かるのならば、この場でこの母が命を絶っても惜しゅうございません。
どうか、どうか……よしなにお願いいたします」
まるで仏様や神様におすがりするように、床に頭をこすりつけて懇願されちゃあ。
それに……
そこまで言えるお母さんなんて、なかなかいないよ。
あたしは村田家の……この地に渦巻くアプレクターを何とかしよう、とさらに決意を強くする。
美絵さんだって素は姉御肌の面倒見のいい優しい女性。
苦しい経済事情だろうに、あたしたちにまで晩ご飯を振る舞ってくれた。
引きこもりの弟さんはやっぱり美絵さんがいくら話しかけても答えもせず、襖に空けた穴から料理を載せたお盆で食事を差し入れるみたい。
料理を作るときはあたしも手伝って、美絵さんと料理談義で盛り上がった。
マモル君は美絵さんのお母さんの話し相手をしていたけど、おばさんはなんだか楽しそう。
美絵さんの男性遍歴が原因で周囲から付き合いを断たれてる、っていうから、やっぱりふだんは寂しいんだろうな。



