「あの……あなたは探偵事務所の人でしたよね」
パンジーに見とれていたあたしは、いつの間にか誰かが近づいていた事に気付かなかった。
ベランダは駐車場に面していて、たぶん美絵さんはそこを通って帰るのかもしれない。
パートからの帰りなのか、近くにあるスーパーのビニール袋を下げた美絵さんはGパンとトレーナーといったラフな格好で、お化粧も口紅程度しかしてなかった。
「あっはい……今日は色々と詳しいお話を伺おうと思いまして」
あたしが鉢植えを抱えながら言うと、美絵さんはスーパーの袋を落としてあたしに駆け寄り、あたしの両手をぎゅっと握りしめた。
「ありがとう!引き受けてくれるのね!!
今まで色んなところに相談したけど、本気で信じてくれた人なんていなくて……すごく心細かったの。
ありがとう……本当にありがとう」
そう言いながら涙まで流されちゃうと、なんだか照れくさいなあ。
あたしはパンジーの鉢植えがあったベランダの右手を向いてたけど、マモル君たちを呼ぼうと顔を上げた刹那。



