「負の感情を持つ人は、黒いのに憑かれやすいってこと?」

あたしがそう指摘すると、アプレクターじいちゃんははげ頭を手ぬぐいで磨きながら答えた。

《そうじゃ。わかりやすく言えば、泣きっ面に蜂だとか、二度あることは三度あると言うじゃろう?
不幸が続くときは、得てして最悪な場合が多い。
その原因の尤もたるものは、大概黒き存在が関わっておる事が圧倒的じゃ。
負の感情に吸い寄せられた黒き存在は負のエネルギーを持ち、それが海の灯台のように仲間をおびき寄せる目印となる。
黒き存在が増えれば増えるほど負のエネルギーは増大してゆき、ますます仲間を集め膨らんでゆく。

そうなれば影の主ばかりに不幸をもたらすだけでなく、周りにも悪影響を及ぼし始めるのじゃ。
一度強大な負のエネルギーを得た黒き存在は不幸で得た嘆きや恨みつらみを飲み込み、糧としてますます肥大化してゆく。

そうなれば後は成長してゆくばかりじゃ。

黒き存在の塊りはある程度まで成長すると、より一層強大な存在となり、その場に不幸しかもたらさぬ悪しき存在となる。それが、「黒き王」じゃよ》