マモル君が持っていた籠の蓋が持ち上がり、そこから顔をのぞかせた黒猫が喋ったから。
あたしは声が聴こえた瞬間に猛ダッシュでマモル君の右手に移動すると、左手で思いっきりぎゅうぎゅうに押さえながら籠の蓋を閉めた。
「ああ、こらこら。マイク、いきなり吠えてなんだね!シャラップ!」
おじさんが紙を見てる最中に、今まで大人しかったゴールデンレトリバーがいきなり籠に向かって吠えだした。
「杏子お姉ちゃん苦しい……」
あたしは全体重を左手にかけて、笑顔を作ったまま蓋を強く押さえ続けた。
「なんか、子どもの声がせんかったかな?」
「い、いいえ!きっと空耳か、近所の子どもたちでしょう。あたしには何も聴こえませんでしたから!そりゃあもう、見事に何にも」
あたしが笑顔を引きつらせないように努力しながら言うと、不思議そうな顔をしながらも、おじさんはレインボーハイツのだいたいの場所を教えてくれた。
お礼を言ったあたしとマモル君がそちらへ歩き出した時も、ゴールデンレトリバーはこちらへ向かって吠え続けてた。



