「まあ今朝はあたしを助けてくれたから、牛乳代はチャラにしておくけど。明日からちゃんとお代を払ってもらうからね」
あたしがそう言うと、アプレクターじいちゃんはいじけた声を出す。
《そんな殺生な!世知辛すぎじゃ~!老い先短い年寄りから搾り取るのかいの!》
「当たり前でしょう!このところ牛乳だって安くないんだから。
今まで198円で買えた銘柄が248円にも値上がりして家計には大打撃なんだから!
今のあたしは1円だって無駄遣いしたくないんだからね」
事務所の隅っこに行って背を向け膝を抱えてるアプレクターじいちゃん。
その演技にいちいち同情してたらキリがない。
「それよか、外じゃあお仲間がいるって言ってたよね?
なら、あなたは外の状況は分かるでしょ?教えてよ」
あたしが言っても、いじけたふりをしたアプレクターじいちゃんは動く気配がない。
なら仕方ないか。
「じゃあ、明日の朝牛乳コップ一杯ならタダ」
あたしが譲歩して寛大な態度を示すと、一瞬でアプレクターじいちゃんはあたしの影に同化する。



