家と言わず樹木と言わず門と言わず。
日向家の敷地内にあるあらゆる物の影から、黒きアプレクターが湧き出し始めた。
あたしはどうしても玄関にある物が気になって、あえてアプレクターが蠢く中に足を踏み入れた。
息を整えて、出来るだけ早く足を動かして玄関まで突っ切る。
途中で無数のアプレクターが触手を伸ばしてきたけど、目の奥から熱くなると同時に目力で全て撃退する。
玄関のドアに貼られていた紙を乱暴に剥がすと、あたしはいつの間にか陰に囲まれてた。
陰は嘆く声や泣き声や恨みつらみをぶつぶつと上げ続け、ハッキリ言って気色悪い。
《じゃから早く離れろと言うたのじゃ!言わんこっちゃない》
アプレクターじいちゃんの言うことはもっともだったけど。
「だって……友達のケンが変わった理由の手がかりになると思って。
ケンとチカを元のさやに戻してあげたいから」
《仕方ないのう……わしが誘導するから、直ぐ後に続くのじゃぞ》
アプレクターじいちゃんはそういうと、あたしから離れ勢いよく門を目ざした。



