自宅の布団で目覚めたあたしは、両手で頬を叩いて自分に喝を入れた。
ナギの婚約がなにさ!
男がなにさ!!
あたしより大変な想いで生きている生命たちなんて、それこそいっぱいいるんだから!
人間以外の生き物たちは明日の保証なんかなにもないし、護ってくれる法律も警察も病院も保険も福祉施設もない。
それに比べたら、あたしなんて恵まれ過ぎてる。
友達も家族も親しい人も居て助けてくれるし、飢えるコトも渇くコトも知らない。
あたしの悩みなんて本当にちっぽけなんだ。
宇宙から見れば、青い惑星地球に生きるあたしの悩みは、本当に些細な事。
確かにあたし自身は本気で深刻に悩んでたけど、今すぐ命に関わる重大事でもないし。
そう考えたら、何だか自然と心が軽くなってきた。
そうよ!
ゴキブリ並みの生命力も、雑草のようなしぶとさも、諦めの悪さも、全部あたしだから。
庶民パワーを舐めるんじゃないわよ!!
あたしはナギとお嬢さまに対して、メラメラと対抗意識を燃やした。