シルエットはあたしに地面にこすりつけそうなほど深々と頭を下げる。
(とはいっても、地面に伸びた陰だけど)
善きアプレクター。
あたしはそう感じた。
今まで関わった事件では人の欲望や悪意から生じた、攻撃的で負の感情ばかりのアプレクターしか対峙したことがなかったけど。
このアプレクターは確かにスケベだけど、そんなのはたぶんお茶目な側面のひとつに過ぎないんだ。
白き陰からは清らかで優しい空気、そして瑞々しいばかりの躍動感が溢れていて。
まるで森か5月の草原の中で風にそよがれているように。
あたしの中に清浄な気が満ちてきた。
《わしゃあここにずっとおりましたわい。
人間の年で言えば軽く500年ほどにはですのう。
わしはもともとこの地を見守ってきた大樹であったのじゃが……
ついには根元から腐ってきてしまったために、危ないと切り倒されてしもうたんじゃ。
ほれ、そこに池があるじゃろう。
そこの岸にわしは生えてたんじゃが、夏の水遊びをするおなごの肢体が見れなくなって哀しゅうてのう》



