《へっへっへっ、なかなかええケツしておるのぅ。体つきは細身じゃが、尻は触りがいがある》
あたしに聴こえたその声は、耳にじゃなく心に直接響いてきた。
……これは。
あたしは怒りで正気に返ってたから、却って冷静に状況を把握できたんだと思う。
声をした方がどちらか判らないけど、犯人は直ぐ近くにいる。
「マモル君、あたしは何ともないよ。
それよりも、悪いけどしばらくあっちの方を向いておいてくれる?
ちょっと物音が聴こえるかもしんないけど、気にしないで絶対に振り向かないでね」
あたしはさっきまでのしおらしさと涙とは対照的に、憤りで威勢よく言ったものだから、マモル君は困惑しながらもあたしの言うとおりに背を向けて池の中をのぞき込んだ。
さあ~て、これで犯人を懲らしめる準備はできたわ。
あたしは何事もなかったようにその場から離れると、季節はずれの椿に見とれる振りをした。
……その数秒後。
外見の様子とは裏腹に神経を研ぎ澄ませたあたしの感覚が、下からくるモノを素早く感知した。



