「いいえ、このようなお見苦しい姿をお見せしまして申し訳ございません。お暇させていただきます」
あたしは出来るだけ丁寧に頭を下げると、静かに居間から退出して。
玄関から出た瞬間に、なぜか涙が溢れ出して止まらなかった。
自分がかなうはずがないんだ、と解ってたのに。
あたしはアクアマリンのペンダントを貰えた、という根拠にもならない理由だけで、ナギの縁談話をどこか現実味に欠ける夢物語としか考えてなかった。
相手のお嬢さまだって、ただのわがままな気位の高い嫌なひとだって。
勝手にそう思いこんでた。
あたしがバカだったんだ。
でも………
これで大丈夫。
あたしは大丈夫。
忘れられる。
断ち切る事ができる。
かなわないと知ったから。
「マモル君……映画の話……いいよ。一緒に行こうよ。あたし、ポップコーンが食べたいな」
あたしはマモル君にそう返事した。
マモル君なら大丈夫。
包み込んでくれる優しさがあるし、頼りになるから。



