夢の中では久しぶりに黒髪の王子さまと会えたけど。


あたしは何も言えなくて。


王子さまも何も言わなくて。



胸が苦しくなるような夢だった。





あたしが目を覚ました時、まず目に入ったのは天井だった。


天井を支える木製の梁が少し開いた雨戸の隙間から漏れる月光に照らされ、まっすぐに伸びる影を形作ってた。


時々聴こえる車のエンジン音とタイヤのきしむ音。


それ以外は何にも聴こえてこない。


風もそよと吹かない。


たぶん静江おばあちゃんがあたしを気遣って、電気を消してくれたんだろうけど。


今のあたしにとって、青白い月光しか射し込まない薄暗い部屋にいると、お母さんとお父さんがあたしが原因で言い争っていた、あの晩の記憶が甦ってきた。


ごめんなさい。


あたしは、誰にも愛される資格なんかないんだ。


あたしがいるから、みんなが不幸になる。


あたしは胎児みたいにお腹を抱え、体を震わせながら声を押し殺して涙を流した。