だからあたしの料理を褒めてくれないのかなあ。
そこでなぜかあたしが思い出した顔は、最低なイヤミ男。
(バカ!なんでこんな時に思い出すのよ!!)
あたしは別にアイツのことなんか……!!
「ねえねえ、杏子お姉ちゃんは知ってる?
今日ココアお兄ちゃんが帰ってこなかった理由」
あたしがアイツのことを思い出した時に、狙いすましたように博君が言ったのは偶然?
あたしは一瞬心臓が大きく飛び出すかと思う位にビックリして。
胸を押さえて軽く息を吐いて緊張を解いてから、左隣にいる博君に目をやった。
「別に、あたしはどうでもいいよ。
ナギは明日になったらどうせまたひょっこりと顔を出すに決まってるんだから」
あたしは本気半分、偽り半分の気持ちでそう言った。
博君は座布団から体を乗り出してたけど、あたしがそう言うとぱっと顔を輝かせた。
「よかった!オレ、てっきり杏子お姉ちゃんとココアお兄ちゃんが“ソウシソーアイのコイビト”かと思ってたから」
「博君、どこでそんな言葉覚えたの?」



