あたしはなんとなく気まずく思えて、マモル君とは博君の家の前で別れた。
「杏子お姉ちゃん、元気ないけど何かあったの?
なら、おばあちゃんのお菓子食べてくといいよ!
おばあちゃん今日は朝からイチゴのムースをたくさん作ってたんだよ」
博君は彼なりに気遣ってくれたのか、あたしの顔をのぞき込みながら袖を玄関の方へ引っ張る。
静江おばあちゃんのイチゴムースか……
昔は和菓子が苦手だったあたしのために、静江おばあちゃんはわざわざ洋菓子の本を買ってきて勉強してくれたんだよね。
微かだけどナギへの心配と、マモル君への戸惑いで……
あたしはなんだか無性に静江おばあちゃんに会いたくなった。
博君の手に引かれたまま、加藤家のなかに足を踏み入れたけど。
「これ、なんですか、博。まずはきちんと帰宅のご挨拶なさい」
さすがの静江おばあちゃんも、孫には言うべきときはぴしりと言う。
博君は慌てて「ただいま」って挨拶したけど、ちょっぴり不満そう。
そりゃあ、子どもには面倒くさいよね。



