「……で、その患者さんが言うには、俺の父さんが渋くて好みだから、回診の時にわざと大袈裟に不調を訴えるらしいんだよ」
午後9時。
なにか用事があっても、必ず夕食には間に合うように戻ってくるナギは
事務所に姿を現さなかった。
あたしは8時まえから料理を始め、8時半には全部出来上がったけどナギは帰ってこない。
仕方ないからナギの分だけ残して、マモル君と博君に麻婆丼と中華スープと棒々鶏をご馳走した。
ナギがこんなに遅くなる用事って何だろう?
今日は遅くなっても8時迄には戻る
そういってたのに。
まさか、事故なんかに遭ってないよね!?
いろんな想像をして口数が少なかったあたしは、ふさぎ込んでいるように見えたのかも知れない。マモル君があたしに色んな話をしてくれたり、料理を褒めてくれたりしたけれど。
あたしは全部上の空で聴いてるだけだった。
あたしの様子がいつもと違ったからか、博君も口数が少なくて。
その日の夕食は、はっきりいえば味気なかった。



