頬を膨らませた杏子は無言でおみくじ売り場に向かい、小銭を払って白い和紙を広げて。
そのまま固まった。
俺もたまには一興かとおみくじを買うと、開いた紙面には
『大吉』
と書かれていた。
杏子の手からおみくじをすばやく奪ってしわくちゃな紙面を広げると。
『大凶』
と書かれていた。
「やっぱりナギがあたしの運を奪ってんだ」
聞き捨てならない呟きが聴こえたから、俺は無言で杏子を見てやると。
やつは知らんぷりをしたまま、手元のおみくじを細長く折り畳んでいた。
杏子が木の枝におみくじを結びつけようとしても、背が足りないのか届かない様子だったから、たまにはと俺が代わりに手を添えて結んでやると、杏子は小さな声で
「ありがとう」
とだけ言って直ぐに視線を逸らした。
「さ、帰らなきゃ。明日はお汁粉も作るからね!」
駆け出そうとした体に背中から手を回し、俺は杏子を抱きしめた。
出来ることなら、ずっと側に。
俺の願いは、ただそれだけだった。