そういえばスーパーに買い出しに行ったとき、ちらりと触れた杏子の指先は氷のように冷え切って冷たかった。
昨夜のインターホンは杏子だったのか。
あれから朝まで……
10時間以上雪の中を待っていたのか。
本当に真性のバカだ。
救いようのないアホだ。
濡れた体と服のまま、冷えた身体で。
熱が出てもそれを隠すため、わざと笑顔で明るく振る舞って。
どうして
どうしてそこまで俺にする?
以前杏子は俺に何も期待しないし、何もして欲しくないと言った。
確かに……
杏子自身に関してはそうで。
自分のために自分から何かを望んだりする事は一切なかった。
もし何かを望んでも、それは自分以外の人間の為になる事ばかりで。
そして……
杏子が一番多く望んだのは
俺に対してだった。
それは、杏子の益にはならないような事ばかりで。
いつもいつも俺を怒鳴りつけ、怒り通しで。



