……今まで
こうして俺を叱りとばした者はいたろうか?
学生時代を通しても、俺が産土本家の嫡子と言うことで、教師は俺を注意する事すら慎重で。
ましてや怒ったり叱ったりなどしなかった。
親友のマモルはその優しさからよく忠告はしてくれたが、本気の喧嘩をするほど仲がよい訳でもなく。
産土本家にいた頃も、誰ひとり心のこもった叱責などしてくれなかった。
あるのは世間体を気にするだけの、自分の恥とならぬような保身から出る虚しい言葉ばかりで。
俺のことを心底思いやった声など、一度も聴こえなかった。
気弱な親父は怒る事もなく、注意もなかなかしない。
俺は別に自分が特別な存在だとか、完璧な人間だと自惚れてはいない。
むしろ、欠点だらけで虚しい存在と思う。
だが
渚杏子は
そんな俺を
叱りつけた。
どうでもいい相手ならば、そんな事はしないはずで。



