オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】




俺の言葉は最後まで言えなかった。


あろう事が、杏子が俺の頬を思いっきり叩いたからだ。


それも、二度も。


予想以上の衝動に俺の身体は椅子からずり落ち、床にしりもちをついた。


「いつまでも甘ったれてんじゃないわよ!!」


杏子は俺の前に立ちはだかると、腰に手を当て今までにないほどの厳しく鋭い声で俺に怒鳴りつけた。


「確かにあんたは今まで女性不信になっても仕方ないくらいの酷い体験をしたかもしれない。
お母さんに殺されかけたんだもん、あたしには想像もできなかったほどつらかったと思う」


「おまえなんぞに何がわかる!」


俺は、いつの間にか杏子を怒鳴りつけていた。



「唯一無二の存在だった母親に裏切られ、あまつさえ殺されかけた!
おまけにあの魔性女は嫌い抜いた親父を浮気の隠れ蓑にした挙げ句、明らかに親父の子じゃない子どもを生んだくせに、図々しく親父の子として籍に入れやがった!
未だにやつには愛人が5人はいるんだぞ!
中には俺とそう変わらない年の男までな」