オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】




俺の体をドアごと押し返し、部屋へズカズカと入り込んできたからだ。


何を考えたのか、杏子は直ぐにドアノブの内鍵を締める。


たぶん親父にこれからの話を聴かせたくないからだろう。


面白くはないが、その点は俺も同じだから、文句はつけなかった。


俺たちの間に一本の細糸にも似た緊張感が流れた。


まるで親の敵同士のようににらみ合っている。



先に口を開いたのは杏子だった。


「ナギ、昼からずっと変だよ。なんであたしの目を見ようとしないの?」


つくづく鈍すぎて話にならないヤツだ。


俺は大きく息を吐き出し、バカ杏子に言ってやった。


「おまえが訳が分からんからだ。
なんでここへ来た?
母親やマモルの同行を断ってまで来る理由がおまえにあるのか?」


昼前にも訊いたコトを、俺は更に繰り返す。


「なぜ一緒に行ってやらなかった!?
母親やマモルをどうして捨ててきた!?
どうしてそんな事をする!そんな事ができる!」

俺は最後には怒鳴りつけるように声を荒げていた。