まだ意味が解らないのか、杏子は俺の顔を見たままぼおっとした間抜けな顔をしていた。
俺は苛立ちがさらに増し、杏子を玄関から叩き出すため廊下に連れだそうと、やつの手首を掴んだ。
それで初めて気がついた。杏子の肌は熱かった事に。
風呂上がりだからある程度熱っぽくなるのは自然なコトだが、杏子の体温はそれより遥かに高いらしく、不自然に熱い。
……熱を持ってるのか。
流石にこんな状態でまだ雪が降る外に叩き出す気にはなれず、俺は乱暴に手を払うと、自室に帰ろうと足を踏み出した。
「ナギ、ちょっと待ってよ!!」
後ろから杏子の声が聴こえたが、俺はシカトして足早に部屋に入ろうと手早くドアを開けて……
閉めたつもりだったが、わずかな隙間を突いて杏子はいつの間にかドアに挟まれていた。
「ナギ、訊きたいことがあるんだけど」
勝手に挟まれてろ。
俺は杏子を追い返すため、ドアに体重をかける。
だが、苦しげな表情をしながらも、杏子はとんでもない馬鹿力を発揮した。



