昼食は中華だったが、夕食は一転して鶏鍋だった。
きちんとだしも取られて野菜もたっぷり入っており、杏子の言うとおり栄養的には断然いいのだろう。
親父はまたアホの一つ覚えみたいに「美味いなあ」を繰り返す。
「夜には年越しそばを茹でますけど、やっぱり温かい方がいいですよね?」
杏子が訊いてくるのも親父は感激した様子で
「あ……そうだな。やっぱり今日は寒いし、温かい方にしてもらおうかな。出来たらネギたっぷりエビ天入りだと嬉しいかな」
「やっぱりエビ天は必須ですよね!ちゃんとエビは買ってありますから……ナギもそれでいいよね?
あ、それから。
後でしめ縄と鏡餅を玄関に飾らなきゃ。ナギもそれ位手伝ってよ」
イライラする。
本当に何をしに来たんだ、この女は。
俺は杏子がこの家に溶け込みつつある事に拒否感を抱き、やつの存在を全て否定したくなった。
俺はろくに夕食を食べずに箸を置き、杏子の声に反応せず和室を出て自分の部屋に帰った。



