昼食後も杏子はほうき、雑巾、バケツetc.を手に、二階の掃除に挑んでいた。
トイレでは便所バチが出たと叫び、風呂場ではヤモリが出たと騒ぐ。
そのたびに相手にするのも馬鹿らしく、全て無視した俺は部屋へ戻りトレーニングを続けた。
夕方頃だったろうか。
隣の部屋からガタガタと振動が伝わってきた。
俺の部屋は毎日の室内トレーニングのために床には耐衝撃加工、壁をはじめとした全面には防音加工を施してある。
だが、そんな壁を揺らすほどの衝撃となれば、考えられる原因はただ一つ。
親父の部屋に杏子の魔の手が伸びたに違いない。
息子の俺が言うのもなんだが、親父の部屋はここに住むようになってから、まともに掃除どころか整理整頓すらされたコトがない。
あるのは主に本の山だが、たぶん探ればミイラと化したネズミの死骸や、10年前の食べかけの弁当類ぐらいは出てくるだろう。
キノコ位は生えてるかもしれない。
ありがた迷惑なその振動は夜の7時過ぎまで続き、半頃には漸く収まった。



