11時に家に帰ってきたが、1時には台所が何とか見られるようになり、杏子が昼食の料理を何品か作っていつの間にか食卓の上に並べていた。
中華丼に、揚げ春雨と卵入り中華スープ。エビのマヨネーズ炒め。
もちろん冷凍食品でもレトルトでも市販惣菜でもない、全て杏子の手作りだった。
「美味い!こんな美味い料理を食ったのは何年ぶりかな。なあ、凪」
人見知りするはずの親父が杏子をすんなりと受け入れ、あまつさえ料理を褒めるなんて。
俺には想像も出来ない場面だった。
親父は俺の裏業のコトなど知らないから、杏子はバイト先の仲間だと紹介しておいた。
そうしたらなぜか親父はぽろぽろと涙をこぼし始めた。
「本当によかったなあ……凪。
父さんてっきりおまえが女嫌いと思ってたのに、そんなおまえにもこうしてカノジョが出来たなんてな。
ずっと心配してたんだぞ。
私の失敗のせいで、おまえは幼い頃から女性に対してひどく醒めた目を向けるようになっていたからな。
ずっと責任を感じていたんだ」



