シャッター前の庇など、風が強い今の時期何の役にも立たない。
杏子はなんのつもりか、白い息を吐き出しながら、ただジッと店の前で佇んでいた。
……いったい何の用があるんだ?
あいつはマモルたちとハイヤーでとうに発ったんじゃないのか?
俺はなぜか苛立ちを感じ、バカ杏子を追い払おうと立ち上がった。
「おい、雪ダルマ頭。
凍死するならよそでやってくれ。
うちの前でやるくらいなら、真冬の川に叩き込むぞ」
俺が腕を組みながらそう言うと、杏子はやっと俺が近くにいるのに気付いた様子で、こちらを見上げた。
「うちにたかりにでも来たのか?お年賀アタマ。生憎とうちは外見は小学生なおまえにお年玉なんぞ用意してないからな」
「ち、違うって!
あたしはただ、ナギの家のお手伝いに来ただけ!誰がたかりにくるのよ!」
俺が二言目を繰り出して、やっと杏子はそれに反応した。
「住所をマモル君に訊いてきたの!
ナギのお家お父さんとナギの2人しかいないっていうから、余計かもしんないけど、なにか手伝いたくて」



