俺が今住んでいるのが、事務所から歩いて30分ほどの距離にある
「産土書店」。
親父が10年前に30坪ほどの店舗兼住居つきの土地を買い、1階を書店に改装して2階は住宅として使っている。
店舗自体も20坪あるかないかの広さだが、近くに大型書店などがないこともあり、まあまあ客はやって来る。
その店は殆ど親父1人でやりくりしている。
現代人の活字離れによる売り上げ減に加え、若者による万引きや情報盗難等の損失で経営はかなり厳しい。
この書店だけで暮らしを成り立たせようとすれば、俺と親父はかなりの極貧生活を送らねばならないだろう。
だがそうならないのは、皮肉にも産土家の本家―あの魔性女がいる―から、毎月多額の養育費が俺あてに支払われているからだ。
あの魔性女は俺を殺そうとしたくせに、外面ではさも息子想いの優しく貞淑な母親を演じ続けているのだ。
今だとて変わらない。
月500万の金など、あの女からすれば小遣いにすらならないはした金に違いないが。



