年末最大のイベントであるクリスマスが過ぎ、各企業や学校が休みに入る29日午後7時。
産土探偵事務所も本年最後の仕事を終え、俺自らの手で鍵を閉めた。
杏子は明日一番に母親を迎えるため、遠方の病院に加奈子先生の車で向かったらしい。
まあ、3ヶ月ぶりの対面になる事だしな。
一応俺は気を利かせて、杏子を5時で帰らせてやった。
鍵を閉める直前。
俺はポケットに入れた筈の手帳を忘れたことに気付き、ドアノブを回して事務所に足を踏み入れた。
閉めようとしていたんだから、当然明かりなど一切点いていない。
非常口を示すプレートのぼんやりとした白色光と、小窓から差し込む街灯の淡い光が伸び、まるでスポットライトのように、事務机の椅子と折りたたみ机を照らし暗闇に浮かび上がらせた。
しばらく休みだから事務所の中はきちんと片付けられており、折りたたみ机も壁の隅に立てかけられていた。
いつも杏子が使う台所も隅々まで片付けられ、水気や汚れなど一切見当たらない。



