「俺はこのペンダントで十分だと思うがな。あの貧乏性女だったらこれでも泣いて喜ぶぞ」
最初にマモルが選んでいた品を指差し、俺がきっぱりと言ってやると。
マモルは「あ、ああそうだな」と言って、結局それを買った。
包装は30分待ちと言われ、番号札を渡された。
その間に俺は気晴らしに他の商品を眺めていたが、ふと気になるものを見つけた。
淡い水色のアクアマリンをあしらった、ティアラ型のシルバーペンダント。
なぜか俺は足を止め、その宝石に見入った。
どこかで見たような気がするその淡い色彩を、何分見続けたろうか。
マモルが包装してもらった品を下げて駆けつける直前、俺は気がつけば慌ててそれを買っていた。
店の小さな袋に入れてもらい、それをコートのポケットに突っ込む。
プラチナ・バロンでの昼食時にマモルに言われ、1月1日が杏子の誕生日だと初めて知った。
だが、俺には関係ないことだ。
その日杏子はマモルからペンダントを受け取り、周りに祝福されるのだろう。
そこに俺の場所など必要ない。



