杏子に可愛がられた陰……アプレクターたちは、満足げに浄化され、いるべき世界へ還っていった。
無意識のうちに杏子は災いの連鎖を断ち切っていたのだ。
アプレクターは人だけでない。
時には他の生物や、草木さえ害を成すものとなり果てる可能性がある。
しかし、杏子がいた場は川沿いということもあり、やつの無意識の力で浄化され清められていた。
その力は水という生命の源にも乗せられ、下流まで届いていた。
だから最近不穏な陰が減ったのか。
俺はやつに興味を持ち、いろいろと調べた。
そして、やつ……
渚杏子の力を利用するために近づき、金にモノを言わせてやつを雇った。
逼迫した経済事情のやつから見れば、喉から手が出そうなほどの好待遇で。
だがあいつは、アプレクターに関する力だけではなかった。
認めたくはないが―
俺に、大切なものを気付かせてくれた。
すべてをさらけ出し、ぶつかってきた。
渚杏子は
俺の中では心の片隅に咲いた、柔らかな花となりつつあった。



