その時から、杏子は本当に地味だった。
セミロングの黒髪を特に結う訳でもなく、ひとえまぶたにこれといった特徴のない平凡な顔立ち。
化粧っけなど当然ない。
着ているものもくたびれ色あせた流行遅れのカーディガンに、型の古いエンジ色のスカート。
足元は丈夫そうな綿の靴下に木の突っかけサンダル。
小柄で体型も体型だったから、最初は小学生と間違えたほどだった。
ただの貧乏くさい小娘か。
俺が渚杏子に抱いた第一印象はそうだった。
だが、その印象が大きく変わったのが、それから1週間ばかり経った頃だった。
俺にしか視えなかった“陰の化け物”
『アプレクター』に接し、あまつさえその姿をさらにはっきりと具現化させ、最後には浄化して還らせていたからだ。
杏子自身は自分のしたことや力には全く気付かず、具現化させたそれらをただの野良猫や野良犬だと思って可愛がっただけだろうが……。
ほかの奴らの不審げな視線にも全く構わず、心底可愛くてたまらないとでも言わんばかりに、生身でない犬や猫をかまっていた。



