まったく、コイツをからかってるといい暇つぶしにはなる。


存在そのものがツッコミどころ満載なのに、動いたり喋れば更にツッコミたくなる。


俺に嗜虐趣味はないが、コイツは見てるだけで妙にからかったり、小突いたり、絡みたくなる。


要するに、俺にとっては虐めたくなるタイプだ。


それでもコイツはしぶといし図太いから、1時間もすればけろりと忘れる。


どこまでも俺の嗜虐心を煽るヤツだ。





産土探偵事務所は夜の10時に閉める。


このところ特に依頼はないから、資料の整理をしながら杏子をいじり倒し、こいつの料理を食べて終わるのが日課になっていた。


今日の鶏鍋はダシが利いてて以前より旨かったが、まだまだだ。


調子づかせるわけにはいかないから、一言も感想を言わないでやった。

杏子は不満げにこちらを見ていたが、こいつを調子づかせれば浮き立ってどんなへまをやらかすかわからない。


だから、俺は杏子を誉めたりしたことなど一度もなかった。