こいつを雇って3ヶ月経つが、全く進歩の跡が見られない。


本当に、進化のない真性のバカだ。


俺が他人からそう感じた時に自然に出る表情を見た杏子は、わざとか大きなため息を着いて、俺の手からスクラップブックを奪い返した。


「やり直せばいいんでしょ、やり直せば。
どうせあたしはバカですからね!」


ふてくされたように頬を膨らませ、俺の顔を見ないように言う。


「当たり前だ。少しは手が早くなれ、ナマケモノアタマ。
あまりに鈍いから、アタマにカビを生やすのがお似合いだな、おまえは」


「誰が頭にカビなんか生やすか!これでも毎日お風呂には入ってるんだからね!」


「おや、おまえの家はてっきり加藤家の犬小屋だと思ってたんだがな。
もっとも、タロウの方が忠誠心が厚くご主人様に命すら捧げたが」


「はいはい、どうせあたしはタロウほど役には立ってませんよ」


「自覚があるなら、進歩を覚えろ。ミジンコアタマ。いや、アメーバーか。お前なら分裂か単一生殖でも出来そうだからな」

「あたしは単細胞生物かっ!」