オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】

あたしが何もかも脱ぎ捨てた後も、脱衣場からお風呂場への戸を開けるのにたぶん5分くらい躊躇ったと思う。


バスタオルもなしの、本当に一糸まとわぬ姿だから。


擦りガラスの向こうにいるのがチカとかなら、まだ全然平気なんだけど。


(大丈夫……ヤツは女の子を嫌ってるんだから)


あたしは胸に手を当て、深呼吸しながら鼓動と息を整え、落ち着こうと努めた。


大丈夫、何にもない。


あたしは説得するために行くんだから。


……よしっ!


俯かせた顔を勢いよく上げたあたしは、擦りガラスの戸に手をかけて一気に開けた。


熱と湿気のこもった白い湯煙が、あたしの肌にまとわりつく。


勇気を出してタイル張りの床に足を踏み出し、浴槽の方を見てみたけれど、湯気がすごくてナギの状態がわからない。


まさか、溺れてないよね?


少しだけ心配になったあたしは、なるべく音を立てないように気をつけながら浴槽の縁に近づいてみた。


泳げそうなほど広いから、それでも湯煙の中のナギの様子は判らなくて。