オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】

「あたし、じいじのお陰で動物保護に興味を持ってWWFに入ったんだから!」


「頑張って!じいじが頑張って生きてるから、ボクもいじめに打ち勝てたんだよ!じいじもこんな程度で負けるなよ!」


数限りない温かな声援が、アラビアオリックスに向かっていく。


でも――


「呼吸が乱れて血圧が低下し始めました!血液検査で白血球増多。CK-MM値も上昇しています!」


「上室頻拍……変行伝導を伴ってないか!?」


マモル君が言うと、ナギは滝のように流れる汗を拭おうともしないで言う。


「酸素吸入を始めよう。カリウム値の補正もな。マモル、先に人工呼吸を始めてくれ。最悪の場合ペーシングを行う」


初めて見た……


ナギのあんな必死な表情(かお)。


あたしからナギの顔は全部見えないけど


聴こえないはずの叫びが

服をすり抜け


肌を通って


あたしの全身で痛いほどに感じた。


“死ぬな”


と―――


アラビアオリックスに全身全霊を込めて


叫び続けてた。