夢の中の王子様は黒い髪だった。


ああ、あんなふうにストレートでもぼさぼさじゃ論外。

あたしの王子様は絶対にすらっとした体型で、無駄毛の手入れもしてて、体臭なんかなくって、汗臭くなくて、日焼けもしてて。
アニメキャラのTシャツが汗染みで透けてなくて、
萌えキャラの紙バックを三つも抱えてなくて、
服もちゃんと折り目がついてしわ一つ無くて、

ガッコのトイレの上履きのままこんなとこに来たりしない。


あたしは飲み終えたはずのストローをまたカップに差し込むと、速攻で飲む振りをした。

その間にテーブルの下でポケットに入れたはずの小説を手探りで探す。


「やぁ、やあ、諸君!見たまえ!綾波レイの等身大ポップを遂にゲットしたんだぜ!」


げ、なにコイツ!?


ヤツをチラリと見たあたしは硬直した。


その男が等身大ポップにうっとりとした目でほお擦りしてたから。


そ、相当やばいよ、コイツ。電波びゅんびゅん。


「おう、ナギ来たか!」


手を挙げたジュン君の一言で、あたしは更に硬直した。