オトコ嫌いなあたしと、オンナ嫌いなあなた。【完結】

目があったのは、雄のアラビアオリックスだった。


かなり年なのか毛艶も悪く、角も右半分が折れて体のあちこちに傷跡がある。


そのオリックスはあたしを真っ直ぐに見てた。


深く、悲しい、何もかもを諦めたような瞳。


あたしはオリックスの多少濁った黒目にじっと見入る。


―ドクン―


すると、またあたしの目の奥が熱を帯びはじめ、体の隅々にまで瞬時に熱が行き渡る。


その刹那だった。




あたしの目の前の光景は、一瞬で動物園から全く見知らぬ土地へと変わった。




そこは、緑や水場が殆どない、乾いた土地だった。


土埃が含まれた熱風が体をなぶり、じりじりと照りつける太陽の強い光が容赦なく体力を奪う。


だけど、不安じゃない。

仲間がいたから。


薄く茶色がかった短い体毛に、鹿に似た優美な体つき。


何より、真っ直ぐに伸びる黒き角。


ああ、そうだ。



私は今群れで移動をしていたんだ。