1位でバトンを手にした赤ハチマキの中田先生は、猿を連想させるような素早い身のこなしでゴール目掛けて駆けて行く。



そしてたて続けに走り出す、緑ハチマキ教師。
実はこの先生、元陸上選手で、現陸上部顧問だったりする。
4人の中で間違いなく1番の陸上経験者だ。




それに遅れること2秒差で助走を始める、耀太。




この時には、あたしは胸の鼓動さえも気にならないほど、その姿を見つめていた。




ヒロキから上手い具合に渡されたバトンを左手に持ち替え、綺麗な弧を描いて前へ前へと駆けていく長い足。





コーナー手前で、赤・緑の差は2mから1mになり、その後ろに続く耀太も、前との差を少しずつだけど詰めているように見えた。




そしてあっという間に、緑・赤・青・白の順になってコーナーへ。




後残すは直線のみ。





ついに耀太が、中田先生を抜いて2位になった。





……凄いよ、耀太…
めちゃくちゃカッコイイよ……





向こうから駆けてくる耀太の姿に、不埒な妄想に2度も囚われたあたしの弱い心が、キレイさっぱり消えていく。




代わりに胸に去来したのは、やっぱり耀太が好き!という熱い想いで。






陸上経験者らしく見事なスライド走方で逃げる緑ハチマキを、懸命に追う耀太に、あたしの胸が何度もキュンキュン鳴った。






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