白露降る

「男のくせに女々しい奴」

「……は?」

「自分から言うこともできない臆病者。早く言ってほしかったでしょ?だから言ってあげる」


 胸にたまったものをすべて吐き出すために、息を思いっきり吸いこんだ。


「別れてあげるよ、自分で告げる勇気のない達也君」


 自然と口角が上がった。

 みるみる目の前の顔に、怒りが浮かぶのがわかった。


 言い方に怒ったわけじゃない。

 そりゃ、多少は驚いたかもしれないけれど。

 怒ったのは、図星だからだ。

 1年間、何も見てこなかったわけじゃない。

 私は私なりに達也を見てきたのだから、確信がある。


「1日早いけど、1周年のサプライズプレゼントだよ。今までありがとうございました」


 目を見開き、震える達也を残して立ち去る。

 左手に鞄、右手に伝票。

 どうせ、今日も財布なんて持ってきてないんだろうから。



 残っていたチョコレート以上に、甘すぎた。