白露降る

 傾ければドロリと流れる。

 さらに傾ければこぼれる。

 器に口づけ、最後の一滴まで飲み干した。

 視界のなかにぼんやりと、唖然としている達也が映っていた。


 甘ったるい。

 最後の一滴は残しておくものなんだな。

 甘すぎる。

 器を置いて、水を飲んだ。

 飲み干して、残った氷も放り込んでかみ砕く。


 そして、達也を見やる。


「達也、明日が何の日か知ってる?」

「あー?」


 間抜け面。


 思わず鼻で笑った。


「明日のために言いたいことがあるの」

「へぇ?」


 なぜか楽しげに笑う達也の鼻を、へし折ってやりたかった。